ゲーム資料の寄贈に関するご案内


※2023年10月25日現在、所蔵スペースに制約が生じており、寄贈を希望される資料の分量によっては受入が困難と判断する場合があります。ご了承ください。

本センターのゲーム関連資料の寄贈に関する情報発信に対して、様々なご意見、ご助言をいただき、まことにありがとうございます。以下において、ゲーム資料の寄贈のお願いをするに至った、経緯と背景をご説明いたします。

本学では、1998年から「ゲームアーカイブ・プロジェクト」として、ゲーム保存のための研究活動を小規模ながら実践して参りました。同プロジェクトについては下記ウェブサイトに過去情報がありますが、研究用のゲームソフト、ハードおよび資料を収集するとともに、国内初の本格的なビデオゲーム展覧会「レベルX」への協力、ゲーム保存研究用の任天堂ファミリーコンピュータの公認エミュレータ「FDL」の開発、ビデオゲームに関するシンポジウム・カンファレンスの開催など様々な活動を行ってきた経緯があります。

ゲームアーカイブ・プロジェクトとは

また、その活動の中で、アカデミズムとしての議論が非常に立ち後れていた「ゲーム保存」についての体系的な研究を進め、わかりやすくまとめたものとして下記を公表しています。他にも同一テーマに関連して多数の学会発表、学術論文、著書、報告書があります(本ページ下段)。

概要といたしましては、「現物保存」・「エミュレータ」・「ビデオ映像」といったゲームに固有の保存手段を確立させつつ、それらを複合的に組み合わせてゲームの「保存」・「展示」・「利活用」という目的を達成するものが、ゲームアーカイブであると考えてきました。また、アーカイブの対象としては、完成品以外にも、開発途中に生み出された資料や開発プロセスに関わる言語化されない情報(オーラルヒストリー)なども極めて重要であると考え、開発者、企業家の方々を対象としたヒアリングや研究会を数多く実施してきました。

さらに、上記の論点以外にも、単に一拠点での保存を構想するにはゲーム文化があまりにグローバルに拡張しているという課題があります。そのため、網羅的なデータベースを整備した上で、国内外の所蔵拠点とのネットワーク形成を推進し、それらの所蔵状況を共有することで、ユーザのゲーム資料へのアクセス性を向上させることも大きな意味で保存に寄与する活動であると考えています。この観点から、公的図書館や国内外の大学、ゲーム保存専門機関の関係者、研究者とのネットワーク構築および共同研究も進めております。

2011年4月には、以上の活動を含めた本学でのゲーム関連研究のさらなる活性化を目指して、立命館大学衣笠総合研究機構内に「ゲーム研究センター」が開設されました(以降、ゲームアーカイブ・プロジェクトは同センターのアーカイブ研究を担当しています)。

このような本学のゲーム研究に対する社会的関心の高まりとともに、新聞等のマスメディアで本センターのゲーム保存研究の活動が広く紹介されることになりました。その後、それらの記事を受ける形で、多くの一般の方々からゲームソフトやハード類の寄贈の申込み、ご相談を継続的にいただいております。研究条件と予算に限りのある本センターの現状を考えますと、大変ありがたいことではありますが、なかには、事前に連絡をいただかないままゲームソフト、ハード類を送付される方もおられるなど、このまま無原則に資料を受領いたしますと、その扱いに本センターとしての責任を負いかねる状況が生じることが懸念されるようになりました。

このような経緯から、研究機関である大学の役割と責任を踏まえた上で、学内機関と調整し、学内諸規定に則った形で受入が可能な「現物寄附」の手続きを告知させていただきました。詳細につきましては、改めて別ページにてゲーム資料の寄贈を検討いただく際のお願い事項を記載させていただいております。

受け入れさせていただく資料につきましては、研究者、大学院生、学生のゲーム研究資料としての利用、例えば、本センターのメンバーが中心となり発刊いたしました『ファミコンとその時代』(NTT出版)のようなゲーム史研究のための基礎資料、また、ゲームデータベースのレコード拡充のための基礎資料、ゲームに関連する各種展覧会への協力などさまざまな形で活用させていただくことを想定いたしております。とりわけ、ゲームに慣れ親しんで成長し、大学でゲームの研究や開発を志す若い学生たちが、自らが生まれる以前のものも含めた様々なゲームタイトルに接することで、その創造性の源泉を学び、多くのインスピレーションを得ていくことができる、そのような場としても本センターの役割があると考えています。

日本においては、ゲーム研究自体がまだしっかりとした社会的位置づけを確立しているとは言いがたい状況ですが、ゲーム保存の研究、実践はさらに困難で、多様な問題領域を横断する課題です。また、家庭用ゲーム機以外の大型筐体を持つゲームや最近のネットワーク上のゲームなどをどのように保存の対象として考えていくか、またそのための恒常的な組織や仕組みを社会的にどうデザインするかなど、未整理の大きな問題も残されています。

本センターは、微力ではありますが、このような課題を継続的に研究していきたいと考えております。そのためには、なによりもゲーム分野、ゲーム保存の研究実践分野において同様の課題に対して取り組んでおられる個人、組織の方々との連携が非常に重要であると考えています。ゲームに関わるいろいろなお立場の方々にとって有益な役割を果たしていけるように今後も努力していく所存ですので、本センターの活動に関するご意見やご提案がございましたら、是非お寄せいただくようにお願いいたします。

2017年4月4日

〒603-8577
京都市北区等持院北町56-1 立命館大学ゲーム研究センター
Email: rcgs@st.ritsumei.ac.jp

ゲーム保存に関連する主な事業実績

  • 日本文化資源としてのゲームデータベースの継続的構築に関する基礎的研究
    日本学術振興会: 平成29年度(2017年度) 基盤研究(C)
    研究期間: 2020年3月 – 2017年4月 代表者: 上村雅之
  • 平成28年度 ゲームアーカイブ所蔵館連携に関わる調査事業
    文化庁: 平成28年度メディア芸術連携促進事業 連携促進事業
    研究期間: 2016年7月 – 2017年2月 代表者: 上村雅之
  • 平成27年度ゲームアーカイブ所蔵館連携に関わる調査事業
    文化庁: 平成27年度メディア芸術連携促進事業 連携共同事業
    研究期間: 2015年7月 – 2016年3月 代表者: 上村雅之
  • ゲームデータベースを対象とする典拠管理と利活用に関する調査
    文化庁: 平成28年度メディア芸術アーカイブ推進支援事業
    研究期間: 2016年7月 – 2017年3月 代表者: 上村雅之
  • デジタルゲーム作品及び関連資料の整理、保存、修復、デジタル化に係る作業
    文化庁: 平成27年度メディア芸術アーカイブ推進事業
    研究期間: 2015年6月 – 2016年3月 代表者: 細井浩一
  • ゲームアーカイブの構築と運用に関する総合研究
    (財)中山隼雄科学技術文化財団研究開発助成
    研究期間: 2006年 – 2007年

ゲーム保存に関連する主な研究実績

  • 家庭用ゲームソフトのタイトルに関する研究 ― DBを活用した文字数・文字種の観点からみたマクロ的分析 ―
    福田一史, 井上明人, 梁宇熹, シン・ジュヒョン, 向江駿佑, & 細井浩一
    アート・リサーチ 17 29-44 2017年3月
  • ゲームDBのためのデータモデルに関する検討:LODの適用を主たる課題として
    福田一史, 井上明人, & 細井浩一
    日本デジタルゲーム学会2016年度年次大会予稿集 22-25 2017年3月
  • Proporsal and Validation of the Data Model of Video Game Database
    福田一史, 井上明人, & 細井浩一
    Conference Abstract of Replaying Japan 2016 59-60 2016年8月
  • The Design and Development of Turntable-type User Interface for Data-Browsing: A Case of Video Game Archives
    斎藤進也, 福田一史, & 飯田和敏
    Conference Abstract of Replaying Japan 2016 41-41 2016年8月
  • Research on Game Preservation Studies and Reference Network Analysis
    福田一史, & 鎌田隼介
    Proceedings of Replaying Japan 2015 2015年5月
  • オンラインゲームのアーカイブ構築に関する基礎的研究―PRESERVING VIRTUAL WORLDS FINAL REPORTをめぐる論点整理―
    鎌田隼輔, 細井浩一, 中村彰憲, & 福田一史
    アートリサーチ 15 73-85 2015年3月
  • ゲーム保存研究のパースペクティブ-文献調査を通じて-
    福田一史, & 鎌田駿介
    日本デジタルゲーム学会2014年度年次大会 2015年3月
  • コンピュータ・ゲームに関わる諸データベースの問題と可能性
    井上明人, 福田一史, 鎌田隼輔, 中村彰憲, & 細井浩一
    日本デジタルゲーム学会2014年度年次大会予稿集 163-166 2015年3月
  • Construction of Digital Game Basic Title Database, and the International Cooperation
    Kazufumi FUKUDA, Koichi HOSOI, Akinori NAKAMURA, & Masayuki UEMURA
    Proceedings of Replaying Japan Again: 2nd International Japan Game Studies Conference 2014 66-67 2014年8月
  • デジタルゲーム基礎データベース構築の取り組みとその課題
    福田一史
    日本デジタルゲーム学会2013年度年次大会予稿集 2014年2月
  • ゲームアーカイブとゲーム保存の相似と相違
    細井浩一
    『日本デジタルゲーム学会2013年次大会予稿集』 140-147 2014年2月
  • International cooperation and development of the game preservation activities in Japan
    Koichi Hosoi, Masayuki Uemura, Akinori Nakamura, & Kazufumi Fukuda
    Proceedings of Japan Game Study Conference 2013 49-50 2013年5月
  • Game Emulation: Testing Famicom Emulation
    Koichi Hosoi, Geoffrey Rockwell, Kazufumi Fukuda, Jaakko Suominen, Akinori Nakamura, & Shunsuke Kamada
    Proceedings of Japan Game Study Conference 2013 47-48 2013年5月
  • 日本におけるゲーム保存の取り組みの発展とその課題ー主体・手段・目的のパースペクティブ
    細井浩一, & 福田一史
    『日本デジタルゲーム学会2012年次大会予稿集』 8-12 2013年2月
  • Video Game Archive and Collective Knowledge: Practice and Achievement of Game Archive Project
    Koichi Hosoi, Akinori Nakamura, Masayuki Uemura, Kazufumi Fukuda, & Shin Ohno
    Digital Humanities Research and Web Technology 215-235 2012年3月
  • ビデオゲームアーカイブと集合知:ゲームアーカイブ・プロジェクトの活動と成果
    細井浩一, 中村彰憲, 上村雅之, 福田一史, & 大野晋
    『デジタル・ヒューマニティーズ研究とWeb技術』 45-67 2012年3月
  • 大学アーカイブズの応用研究~仮想空間<バーチャル広小路>の構築と運用
    細井浩一, 福田一史, & 浅田恵祐
    『立命館百年史紀要』 (20) 7-26 2012年3月
  • Developing Video Game Archives as an e-Research Platform for Game Studies
    Shin Ohno, Takashi Obana, Mitsuyuki Inaba, Akinori Nakamura, & Koichi Hosoi
    Proceedigs of 2nd International Conference of Digital Archives and Digital Humanities 597-606 2010年11月
  • ゲームアーカイブの現状と課題
    細井浩一
    『日本デジタルゲーム学会2010年次大会予稿集』 46-50 2010年10月
  • デジタルゲームのアーカイブについて:国際的な動向とその本質的な課題
    細井浩一
    『カレントアウェアネス』(国立国会図書館) (304) 11-16 2010年6月
  • デジタルアーカイブの社会的利活用とその政策的諸課題について -GAP(ゲームアーカイブプロジェクト)の活動から-
    細井浩一, 砂智久, 中垣剛, & 山根正裕
    『政策科学』 6(2) 1999年2月